冬の記。

ぼってりした雪道を登り切きったところの宿に出会う。

 温泉通の知り合い達に「福島で一番眺めのいい温泉宿は何処?」と聞くと、しばしば返ってくるのが「高湯温泉の〝花月ハイランド ホテル〟」と言う声だ。

 高湯温泉といえば、薬効効果の高い硫黄泉で、深い山間に湯けむりが立ちのぼる秘湯というイメージだったが、眺めというキーワードが絡んでくるのは自分の中ではちょっと意外。さらに、彼らからの情報によれば、こちらのお宿はお料理もなかなかの評判らしい。

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【客室より眺む日の出】

 この冬の暖冬傾向で、今年は高湯も雪が少ないとのこと。手放しで喜んでいいのかどうかは悩みどころかもしれないが、運転する身にとっては幸いだ。思い立ったが吉日とばかりに予約を入れてみたのだったが、結論としては大正解の旅となった。

 車では東北自動車道福島西インターから高湯までものの40分ほど。JR利用の場合は福島駅を下車し、福島交通バス上姥堂経由高湯温泉に乗車して約30分(820円)。思いの外アクセスも良い。

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【左/ロビーエントランス 中/ロビー眺望 右/客室里側】

 実際に車を走らせてみると、さすがに下界よりも雪はずっと多い。とはいえ、ホテルの人の話では、やっぱり今年は全然少ないのだとか。

 高湯温泉共同浴場がある温泉街からやや登り切った処、吾妻スカイラインの手前にあるのが花月ハイランドホテル。高湯地区のなかで最も高い処にある。山道を抜けて敷地に入ると途端に視界が開け、駐車場から下界を見渡す景色もさながら展望台のよう。

天空の宿の呼び名にしかず。

 エントランスをのぼってフロントでチェックイン。 ロビーは駐車場よりも数段高くなっていてさらに遠くまで見晴らしがきく。

 さらに私を感嘆させたのが、お部屋からの景色!外に面する壁面は全て大きなガラス窓になっていて、福島市街と信夫山、その向こうの連山から吾妻小富士までの吾妻連山をパノラマ状に見渡せる。「天空の宿」とはその名の通りと大納得。

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【 夕方山側客室 】

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【左/客室里側 中/客室里側 右/夜景客室】

 旅の荷を解いたところで早速お風呂をいただく。この宿のお風呂は、大浴場と露天風呂がそれぞれ独立しているのだが、その他にも有料の貸切露天風呂がある。

 まずは「空中露天風呂杜の湯」へ。天候にも恵まれ、さほど凍えずに雪化粧の吾妻連山が一望できる。「は〜、絶景。」一緒に入ったおば様方の楽しげな声が山々に響く。

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【左/空中露天杜の湯女 中/空中露天杜の湯女 右/貸切ひめさ湯り夕】

 次に向かうのは「貸切露天風呂ひめさ湯り」(有料50分/1620円) 。小さな宿なら大浴場クラスにもなりそうな広々とした湯船。ややぬるめの具合が本当に丁度良い。

 のんびりと湯に浸りながら、吾妻小富士を右に吾妻連山を望むそのシュチュエーションを独り占めする贅沢。ちょうど陽が落ちて紫の薄暮になるまで、ゆっくりと湯をいただく。まさに極楽。 ついつい、今夜と翌朝も貸切の予約をいれてしまった。

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【左/貸切ひめさ湯り夕 中/湯廊下 右/花月菩薩】

 浴場が連なる湯廊下の入口には「花月菩薩」が祀られている。由縁はわからないが、なにやらご利益のありそうな。

*大浴場と露天風呂は24時間利用だが、貸切露天風呂は5時〜25時までとなる。お湯はどの浴場もちろん掛け流し。


美味しさは優しさと同じと知る。

 部屋に帰ると窓から福島市街の夜景が一望に見渡せる。夕景ともまた違った趣で、一度も二度も美味しいとはまさにこのこと。夕食の時間を待ちながら、しばし夜景を楽しむ。そしておまちかねの夕食は個室料亭で。

 山の宿のお料理といえば、素朴な田舎料理のイメージを持つのだが、花月ハイランドの夕食は「福島の美味」を集めた華やかさがある。 さあ「いただきます。」

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【左/ディナー 中/ディナー 右/ディナー】

 前菜の中のひと皿エビチリは中華専門のお店でもなかなか出会えない本格の味。さらにお刺身は福島名物の馬刺しと海鮮盛の二皿がいただける。茶碗蒸も会津のこづゆをアレンジした冬のオリジナル。

 焼物はイワナの塩焼き、それとその場で火を通し特製のお味噌でいただく和牛の朴葉焼き。ここの名物、山の恵みの釜めしは、席に着いてから火を入れる。御釜の底のおこげもぜひ楽しみたいところ。

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【左/ディナー 中/ディナー 右/ディナー】

 しのぎの麺と、デザートにはリンゴの果実に包まれたリンゴムース。どのお品も味つけがやさしくて、女性にとっては嬉しいかぎり。心から「ごちそうさま。」でもさすがにお腹はパンパンだ

 ちなみに福島は酒どころでもある。地酒を試してみたい向きには福島が誇る銘柄の「飲み比べ三点セット」もあるのでぜひともお試しあれ。

*福島県を代表する三銘柄のグラス酒セット:税込1080円

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【左/ディナー 中左/ディナー 中右/ディナー 右/利き酒セット】

 そういえば貸切露天を予約してあったが、あまりの満腹にお部屋でごろりと横に。牛になるならそれでもよし…。

 寝ざめの夜の露天風呂は、静かで温かで、うっとりとこのまま眠りにつきそうなくらいに気持ち良い。こんなユルさもたまにはいいよね。だって自分へのご褒美旅だから。

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【左/貸切ひめさ湯り夜 中/貸切ひめさ湯り夜 右/湯廊下マッサージ】


時間とともに変わりゆく大パノラマを堪能す。

 早朝、朝日を見ようとカーテンをあけると、そこにあったのはファンタジーな世界。下界には雲から突き出た信夫山とそれを囲む福島の連山。 

 静かに始まるドラマの幕開けのようなご来光とともに、吾妻連山が次々と朝焼けから朝陽に染まっていく。時間の経過とともにお部屋にも光の帯が入り、なにやら映画のワンシーンの中に入り込んでいるような錯覚に。

29朝焼け客室s✪DSC07979合_edited-1.jpg30市街〜吾妻山朝s✪DSC03691合_edited-2.jpg
【左/客室から望む朝焼け 右/街から吾妻山の朝】

28日の出客室s.jpg26朝焼け客室s☆DSC03716.jpg31吾妻小富士朝s☆DSC07934.jpg
【左/客室から日の出 中/客室から朝焼け 右/吾妻小富士の朝】

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【左/客室里側 中/客室里側 右/大浴場「山の湯女」】

 朝風呂タイムも旅行の大事なイベント。「大浴場山の湯」に急ぐ。 内湯の大きさでは高湯一かもしれないという大浴場からの眺めもまた眼福。まるで、大きな日本画を湯船につかって眺めているかのよう。内湯ならではの贅沢を堪能する。

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【左・中・右/大浴場「山の湯女」】

 朝食の時間。昨夜の雰囲気とはまた異なり「福島の朝ごはん」という里料理のイメージだ。特に、シャケと福島野菜のせいろ蒸しと肉じゃが風の温鉢は心を温めてくれる。お腹はまたしてもパンパンに。

 部屋に帰ると、パノラマが蒼々とした、どちらかというと男性的な景色に変わっている。吾妻小富士の雪冠もしっかりと目に届めることができる。

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【左/朝膳 中/せいろ蒸し 右/じゃがいもの煮物】

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【吾妻連峰冬】

 宿滞在の最後の最後、予約してあった「貸切露天ひめさ湯り」に再び行く。陽射しが乳緑色の湯に輝き、その向こうに連山の峰。冬の1日だけで、こんなに様々な景色を楽しめるとは、正直思ってもいなかった。

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【左/貸切ひめさ湯り朝 中/空中露天杜の湯男 右/貸切ひめさ湯り朝】

 気づくと、またここでの春の景色を出会いをを楽しみにしている自分がいるのが、なんだが面白い。おかげでチェックアウトギリギリとなったけど、係の人にお願いして殿方露天風呂のチョイ見も叶って満足。


温泉街の真ん中で共同浴場に立ち寄る。

 帰りはもと来た山道を下る。少し行くと硫黄泉の独特の香りが強くなり、坂道の途中に温泉宿が連なる高湯の温泉街に至る。せっかくだし急ぐ旅でもないので、高湯温泉共同浴場「あったか湯」に立ち寄ってみることに。  

 昔の湯治の湯屋をイメージしたという和風モダンの建物が迎えてくれる。ここは、源泉かけ流しの高湯の白い湯が、日帰りでリーズナブルに楽しめるということで、平日でも多くの人が訪れる人気のスポットだ。

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【左/吾妻小富士朝 中/ロビー眺望 右/あったか湯貸切冬】

 内湯はなく、露天風呂のみだが、ちょうど貸切風呂が空いていたのはなんともラッキーだった。まだ白木も新しい木組みの造りにかけ流しの湯が滾々と湯船に入ってくる。

 どうやら高湯の湯温はやや熱めが普通らしく、ここの湯も露天ながらもやや熱めだ。源泉が目の前というものその理由かもしれない。このあたりはもっと高湯を知る必要があるな…と又来る言い訳などを考える。

*高湯温泉共同浴場「あったか湯」/問合せ:高湯温泉観光協会 電話024ー591ー1125/
営業時間:9時〜21時(木曜日は基本お休みだがシーズン期には無休になることもあるので問合せを)/
入浴料:大人250円 貸切風呂1000円プラス(50分)


十割そばの奥深さを改めて認識する。

 朝あんなに食べたのに、人間とはおなかが減る動物らしい。高湯から国道を降りた庭坂あたりで、花月ハイランドのフロントから聞いたそば屋さんを探す。高湯から降りる県道70号線とJAのある5号線の交差点を左に曲がりややいったところ右側に「そば処西友」がある。

 昼も過ぎていたがすぐに席に座れたのは幸い。早速「舞茸天のぶっかけそば」(950円)を注文する。 一口啜ってみて吃驚。この歯ごたえと喉越しは十割蕎麦の概念を打ち砕くといっても過言ではないかも。さらに舞茸天の美味しいこと。今回は先ほどの温で火照ったゆえに冷たい蕎麦をセレクトしたが、温そばも旨そうな気配。

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【左/西友 中/西友 右/西友】

 土日は混雑することが多く、用意した蕎麦がなくなり次第店じまいとなるそうなので「どうしてもという方は、予め電話をもえらえば準備しておく」との亭主のお話。蕎麦好きにはぜひともお薦めしたいこのお店。高湯の麓にはこの他にもそば屋の看板をかかげる店は多く、食べ歩きも愉しみになりそう。

*そば処西友/電話:024ー591ー5032/住所:福島市在庭坂字渡辺3-8
営業時間:水曜日〜日曜日と祝日の営業、午前11時からそばがなくなり次第終了


各地から一堂に集まった古民家に先人の日常を惟う。

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【民家園】

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【左/民家園旧小野家 中/民家園旧筧家宿店 右/民家園旧筧家宿店】

 県道70号線から東北自動車道福島西インターまでの道すがらやや入った処(そば処西友から約 10分程)に「民家園」がある。敷地面積は11万㎡。この広い敷地の中に、江戸期から明治期の福島県北地方の文化財指定の建物が、約十棟復元されており、ひとつの村の様相となっている。

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【左/民家園旧筧家宿店 中/民家園元各自軒 右/民家園元各自軒】

 案内版に従って順番通りにコースを進む。どの建物も細かなディティールまで復元されており、まるで昔の人たちが今までその場で会話していたかのようだ。江戸や明治にタイムスリップしたような気分で家々を巡っていく。各家の玄関には木の枝が飾られている。園の方に尋ねてみると、この木は「ひいらぎ」で、節分の魔除けなのだとか。 

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【左/民家園旧渡辺家 中/民家園玄関先に飾られた「柊鰯」 右/民家園機織り機】

 今回はお目当ての建物があって、ここを訪れた。敷地のはしにある「旧広瀬座」がそれだ。「旧広瀬座」は、明治20年(1887年)の竣工と予測され、伊達郡梁川町の広瀬川傍に立っていたのでこの名がつけられた。

 最初は芝居小屋として、その後映画館に転用改装されたが、ここでは創建当時の姿で復元されている。外観や採光に配慮した窓の造りなどは、江戸期の芝居小屋を踏襲している。簡素ではあるが、東北に現存する数少ない遊興建物の中にあっても古いものとなり、貴重度はとても高い。

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【左/民家園旧広瀬座 中/民家園旧広瀬座 右/民家園橋銭小屋

 外観の第一印象は「大きな建物」。しかし玄関を潜るとそれは驚きに変わる。舞台、花道、芝居小屋の空気感。演舞の音色、観客の話し声が今にも聞こえてきそうだ。

 桟敷席に目を移せば着流し姿の人々が弁当をつつく姿までもが見えるかのよう。しばし時間を忘れてその場に身を置き、ありし日の賑わいに思いを馳せる。

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【左/民家園旧小野家 中/民家園旧菅野家「どま」 右/民家園旧安倍家】

*民家園/問い合わせ:あづま総合運動公園内 電話・FAX 024ー593ー5249/
営業時間:午前9時〜午後4時30分/休園日:毎週火曜日(火曜日休日の場合はその翌日)と年末年始
入園料は嬉しいことに無料。


旅はまだはじまったばかり。

 さて、冒頭でも少し触れたが、高湯温泉は最近注目の秘湯。旅行誌アンケートの秘湯ランクで日本一、同温泉満足度でも日本一。さらに環境省の温泉総選挙2017では環境大臣賞を受賞するなど、その泉質と湯に特化してきた地道な地域づくりが、ここにきて光が当たっている。

 花月ハイランドホテルは、その高湯の中でも一番の高台にあり、なによりもその景観が素晴らしい。今回の旅での実感だ。というわけでしばらくの間、高湯の魅力に触れながら、花月ハイランドホテルの四季の風情を追ってみたいと思う次第ではある。

注)このブログの写真著作権は全て花月ハイランドホテルに移行しています
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